燻る紫煙
それから、私は二度とあの人と会うことはなかった。

別れは、LINEで告げた。

もう、会えない。

分かった。

それだけのやりとりだった。

だけど、

その一言に、言葉にできない二人の思いが読み取れたように感じる。

あの人がどれくらい私のことを想っていてくれていたのかは、分からない。

でも、

一緒にいるだけで幸せだった。

抱きしめられることで、

私は自分の存在を感じることができた。

こんなにも、

こんなにもあの人を愛している、

自分の存在を。

生涯、こんなにも1人の男の人を愛したことなんて、なかった。

全身で、

全心で、

愛したことなんてなかった。

私たちの関係は、世間から見れば間違っていたのかもしれない。

十分な愛情を得られなかった私のことを、不幸せな女だと思う人もいるかもしれない。

だけれども、あの人を愛したことは間違っていたとは思わない。

あの人と過ごした時間はとても貴重で、

そして幸せなものだったから。

そう、

思い返す。

そしてふと、

テーブルの上の、

あの人が前に置き忘れた煙草の箱が目に付いた。

私はそこから1本の煙草を取り出し、

口にする。

火をつけて、

吸う。

……苦い。

やっぱり煙草だけは好きになれない。

重い、長い静寂と、煙が、私だけを包んでゆく。


そしてそのまま、

煙草を、灰皿に落とし、

火を消した。                 

                  -終-
< 38 / 38 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:6

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

さまよう爪
和蘭芹/著

総文字数/95,577

恋愛(キケン・ダーク)179ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
食品メーカーに勤める小野田すみれには 同い年の広告代理店に勤める恋人・直人がいる 仕事と恋愛 結構上手くいっていると思う日々 しかし、彼女には忘れられない幼き日の 出来事と男がいた そんなある日、つくづく縁のある男と出逢うのだが――――
恋じゃない愛じゃない
和蘭芹/著

総文字数/50,272

恋愛(その他)33ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「陽央くんって、わたしのこと好きなの?」 「はい、好きです。好きになってしまいました」 「じゃあ、 僕は安田さんを買います。 だから、安田さんは僕を飼ってください」
きらきら
和蘭芹/著

総文字数/13,437

恋愛(学園)12ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
コンマ一秒の芸術と きみの後ろ姿

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop