溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
アルコールのせいか

そうだ。きっと、疲れて酔いが回ったんだ。

だから、突然おかしなことを言い出したに違いない。

「冗談でこんなこと言えるかよ」

真面目か。

今、東雲さんがものすごくマトモに見えた

いや、いつもが分からなすぎるせいだ。

「東雲さん、やっぱりなんか変です。」

「人の告白を変で済ませる気か」

「だって、考えてみてください。私のどこに好きだと思える物がおありですか?」

「お前、自己評価低すぎだろ。それに、テリトリーに入ろうとすると頑なに拒むし。」

「そうですね。それは恋愛が私にとって不要なものですから。」

詰めていた身体を半分ほど引いて、東雲さんとの間に距離を作った。

聴こえるのは店内を包むピアノの音色だけ。

周りの会話も雑音も、カクテルを作る些細な音さえも今は遥か彼方。

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