俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「上」
その日も、セーラはやって来た。

セーラは指輪を外しているが、離婚はしていない。なぜ指輪を外しているのかというと、俺に恋をしているからだとセーラは前回の面会で言ってきた。

今日は、その返事を聞きにくるためにやって来たのだ。……まあ、俺の返事は決まっているがな。

「ジャックさん、私はこの恋が背徳だとわかっています。しかし、この想いは本物です。だから……どうか……」

うつむき、震えるセーラに俺は近づき、優しく抱きしめる。

「セーラさん、私もあなたが好きです。愛しています」

舞台に立つ俳優のように、頭の中で考えた台詞を放つ。嘘なのに、セーラの目から喜びの涙があふれてこぼれ、俺の背中に手を回す。

「……私も、愛しています。指輪はあなたのために付けたかった」

馬鹿な女だ。利用されることに全く気づいていない。

俺はセーラにキスをし、「永遠を誓います」と笑う。

すると、セーラはますます幸せそうな顔をする。本当に愚かで滑稽だ。

さて、しばらくは甘い空間で満たそう……。その後は……。



「みんな〜!!おはよう!!」

私がそう言って孤児院の門をくぐると、小さな子供たちが歓声を上げながら走ってくる。

「クリスタルさんだ〜!!」

「お姉さんだ〜!!」

そんな喜びの声を聞くたびに、私の胸は幸せで満たされる。生きていてよかったと思う。

今の幸せを掴むために私を動かしてくれたのはリーバスだけど、それは本人には内緒。なんか照れくさいから。
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