僕の1番大切な人
かなり生意気なことを言ってしまった。

『そうね。たぶんね。ちゃんと籍を入れて、母親になりたいって、そう思うこともあるわ。彼にもプロポーズはされたんだけど、やっぱり踏ん切りがつかなくて。亡くなった奥さんにも悪いし、私も何か怖くてね。こんなに幸せでいいのかなって。この生活が壊れるのが…不安で』

以前の僕と同じなんだね。


すべて失ってしまう怖さ…僕には姉さんの気持ちがよくわかるよ。


『うん、焦らなくていいんだよ、きっと。僕にもやっぱり、どっちか正しいかなんて、わからない。でもさ、姉さんには幸せになる権利があるんだよ。当たり前に幸せになる権利が。それに、姉さんが幸せじゃないと、僕が悲しい』

本当に生意気だ。

今日の僕は、本当に。

『…凌馬君』

姉さんがニヤッと笑った。

『な、何?』

『すごく立派になったね。なんだか、前よりずっと男らしくなったんじゃない?きっと、凌馬君にも大切な人がいるのね』



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