トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 明日香はクラクラする頭を押さえたかったが、とにかく両手で胸を隠した。

(乙女の胸を見ておいて、ブラジャーにしか関心を示さないなんて失礼すぎる!)

 別に欲情してほしいわけじゃないけど、少しプライドを傷つけられた明日香だった。

「私の国では、こんなの庶民でも誰でもしています」

「そうなのか。よほど豊かな国なのだな」

「うう~っ、とにかく背中の薬をお願いしますっ!」

 くるりと背中を向けた明日香に、ジェイルは謝った。

「そうだな。それが先だった」

 彼は長い指で薬瓶から塗り薬をすくい取り、明日香の背中に塗り広げる。その感触に、明日香はまた悲鳴を上げそうになった。男に背中を撫でられるなんて。

「これ、取らないか。ここだけ塗れない」

 ジェイルから声がかかる。背中のホックに手をかけられ、明日香は叫んだ。

「それは絶対、ダメ!」

 頑なな明日香の様子に、やっとジェイルは察したらしい。薬を塗り終えた手を、パッと離した。

「あとは自分でできるな。ここに薬と着替えを置いていくから。終わったら呼んでくれ」

 気まずそうにそう言うと、彼は部屋を出ていった。明日香はへなへなとその場に崩れ落ちた。

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