トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「あのう、脱げました」
声をかけると、ジェイルが振り返った気配がした。
「……よかった。皮がむけただけだ。血はにじむくらいで、大きな傷はない。すぐ治りそうだな。薬を塗ってやるから待っていろ」
ジェイルがドアを開けて出ていく音がして、明日香はホッと息をついた。たとえ背中でも、男性に素肌をさらすのは大人になってから初めてだ。緊張しないわけがなかった。
しかし彼女の安堵も長くは続かなかった。
すぐにドアの開く音がして、ごつい靴が床を踏む。
「まず背中を拭く。いいな」
「はいっ」
反射的に返事をした明日香の背中を、しぼった布で拭くジェイル。
「うひゃあ」
手つきは優しいが、水の冷たさに背中をよじる明日香。
「こら、動くな……なんだこの奇妙な衣服は。邪魔だな」
「きゃああ!」
ブラジャーの肩ひもをちょいと指ではじかれ、明日香は悲鳴を上げた。
「痛かったか、すまん。しかし見たことのない材質だ。それにこの細やかな刺繍……よほど腕のいい職人の手によるものと見た」
ジェイルはブラジャーに興味津々らしい。いつの間にか明日香の前に回り、彼女の胸の辺りを凝視していた。
「やめてください!」
「お前もしや、高貴な身分の女性なのか。誰かに追われていて、怪我をしたのか」