トリップしたら国王の軍師に任命されました。
何より辛いのが、就職後何年たっても終わらない、社内試験と資格の勉強だ。出世意欲がないからか、ちっとも覚えられない。とにかく安定した職につけばいいと思って信用金庫なんて選んだのが間違いだった。
(休みの日くらい、休ませてよ)
いつもリュックの中に入っている朱印帳に思いを馳せる。試験ばかりで趣味の史跡巡りもなかなかできない。
そう、明日香は筋金入りの歴史オタク。日本史全般が好きだが、特に戦国時代が大好きだ。
学生の頃は、バイト代を全国の合戦場跡だの、城だの、神社仏閣を巡ったり、文献を買いあさることに費やした。
安定した職に就き、今後も好きなだけ史跡巡りをしよう……そう思っていたのに、就職してからは休日に好きなことをするだけの余力が残らなくなった。
体力的には大したことないが、精神的に疲弊し、寝るだけで土日が終わってしまうこともしばしば。
(ああくそ。戦国時代にトリップしてしまいたいわ)
古墳の上でぐるぐる歩き周りながら、瞼を閉じて古墳時代の日本に脳内トリップする明日香。
『長が亡くなった……巨大な墓を作って差し上げねばならぬ』
みずらを結ったイケメンたちが、えっさえっさと土を運ぶ。真新しい埴輪を石棺の周りに置いて……。