狼を甘くするためのレシピ〜*

「すみません、お待たせしました」

 初老の客は、茶碗をテーブルに置きながら、ゆったりと微笑んだ。
「いえいえ。そういえば氷室さんは、宝石店まではじめたとか」

「ええ、そうなんです。よく御存じですね」

「うちの娘がLaLaのファンでね。彼女に会いたくて、最近はそこでしか買わないと言ってますよ。店の名前は確か『コル.........』」

「コルヌイエ。日本語でハナミズキのことです」

「ほお一、ハナミズキですか。何か意味がおありなのかな?」

「ハナミズキの花言葉には、“永続性”というものがあると聞きましてね。花言葉のように店が長く続けられるようにと、願いを込めました」

「なるほど。永続性ですか」

もっともらしくそう答えながら、仁は心で言った。

――そんな理由は、後付けだ。

青扇学園の池のほとりに立つ白いハナミズキが、彼女は好きだった。

コルヌイエ。

それはすなわち、蘭々を意味する。
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