狼を甘くするためのレシピ〜*
『動きがありました。写真を送ります』
 藤尾は余計なことは一切言わない。口にしたのはそれだけだ。

「ああ、頼む」

 待つこと数秒、藤尾から写真が送られてくる。

 写真は二枚。
 一枚は並んで歩く男と女が写っている。
 そのふたりは歩きながら話をしているらしい。口元には笑みを浮かべ、軽くお互いを見ている。
 男はスーツ。
 女の服装はありふれた黒のスキニ―パンツを履き、アウターは体の線がわからないざっくりとしたニット。

 もう一枚はその女の顔のアップ。
 眼鏡をかけた彼女の髪型は、前髪を目元まで下ろしたショートヘア。目には前髪がかかっていて、写真からはほとんど窺い知ることはできない。

 化粧はしていないのかと思う程に色がなく、唇は頬とほぼ同じ色だ。

 ――蘭々。

 写真を確認すると、仁はゴクリと喉を鳴らす。

 息を飲むことさえいつになく苦しいと感じながら、そのままメッセージを打つ。

『ご苦労さん。監視は終わりだ』

 藤尾宛に送ると、彼は目をつぶり重く息を吐いた。

 万が一にも別人であってほしい。
 その願いが砂となって落ちていく……。
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