狼を甘くするためのレシピ〜*
 それもこれもあの男が下品だからいけないのよ、と心の中で悪態をついた。

 でも彼が本当に下品なのかといえば、そうでもない。

 サンダル履きであってもヨレヨレのTシャツを着ていても、どこかに品はあるし、決して不潔な感じでもなかった。

 だらしのない仕草をするわけでも、一緒にいて恥ずかしいとか嫌な思いをさせられることもない。
 強いて言えば彼が選ぶ店は、庶民的だというだけだ。

 品の良さと考えて、蘭々はふと思い出した。

 ちょっと驚いたことがある。
 彼の着ていたスーツは、紛れもなく高級品だった。
 間近で見て、それがよくわかった。

 ピカピカの靴も某有名ブランドのこの秋冬の新作。雑誌で見たばかりだから間違いはない。

 クロノグラフとムーンフェイズが搭載された腕時計は、命を懸けていると言っていた通りの高価な物……。一万円札一束では買えないラグジュアリーな逸品だ。

 一体どんな副業なのだろう?

 それとも農業というのはそんなに儲かるものなのか。
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