狼を甘くするためのレシピ〜*
「やだっ、あやまらないで! でも偶然ってすごいわ……」

「ほんとですね、怖いです、偶然にしても。あ、カフェを出たらメッセージ送りましょうか?」

「うん。でももう大丈夫よ。気も済んだし、本当にありがとう」

 バイバイと手を振り合った。

 そのままカフェの中へ消えていく紗空を見届け、クルッと後ろを向いた蘭々は逆方向へと歩き出す。

 ――さて、帰ろう。
 そう思ったが、すぐに帰る気にはなれなかった。

 チラリと視線を向けたショーウィンドウ。
 綺麗に並ぶネクタイが目に留まる。

 今後、ケイに会う機会はあるのか、ないのか。それはわからない。
 少なくとも自分から誘って会うことはないのだから、買ったところで渡せずに終わってしまうかもしれない。

 でも、それでも構わないと思った。
 ただ、彼のための物を選んでみたい、そう思う。
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