狼を甘くするためのレシピ〜*
 慌てたようにスッと視線を外した蘭々は、下を向いて逃げるように先を急いだ。

 辛い時は、追い打ちをかけるように更なる試練が訪れる。

 何故だか昔からそうだった。

 それにしても、と思う。
 ――なにも今、見せることはないでしょう? 神さま。

 空を仰ぎ、そんなことを呟いた。

 彼女がコウの恋人なのだろう。
 真っ直ぐな黒髪の、とても可愛らしい子だった。

 実はとても面倒見のいい彼が守ってあげたくなるような、純粋で素直ないい子に違いない。

 ――私はどう?
 ケイに素直になったことがあった?

 たとえ一度でもいいから……。

 頭に浮かぶのは、意地を張ってるばかりの自分。

 意地っ張りで、聞きたいことも聞けない弱虫で。なにかある度に逃げることばかり考えて、そのくせ実は、彼が追ってくることを願っている。

 そんなだから、こんな目にあっているのよね、と溜息をついた。
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