狼を甘くするためのレシピ〜*
 チョコレートをひとつ。
 それからコーヒーをひとくち口にして、ゆっくりと飲んだ。

 疲れた体を癒すように、甘いチョコレートがコーヒーとともに沁みわたっていくのを感じながら、頭に浮かぶのはやはり夕べのことだった。

『森くん、社長と仁さんのお友達の方なんですって、ご一緒させてもらいましょう』

 カウンターにいた連れの男性に、そう声を掛けた女性。

 椿月子という彼女の歳はまだ二十代だろう。
 なのに彼女は、ケイが代表を務める会社の役員だという。

 美人であるだけでなく、きっと頭がよくて優秀なのだろう。

 手渡された名刺によれば、どんな仕事をするのか蘭々には見当もつかないチーフクリエイティブオフィサーという肩書を持っていた。

 歯切れのいい落ち着いた話し方。
 姿勢やセンスの良さ。

 理想的キャリアウーマンのようだった彼女。
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