狼を甘くするためのレシピ〜*
 まだこの男とは二度しか会っていないし、元々蘭々は話好きなほうではない。
 なのに、なぜだか次々と言葉が出てくる。

「そうなんですか、いいですね兼業。どちらかダメでもなんとかやっていけそう」

「だろ? いいとこどり」
 男は自慢げに親指を立てて、ニッと笑う。それも軽いウインクつきで。

 一見するとチャラい男だ。

 でもどうだろう?
 クスッと笑いながら、蘭々は彼の隣の空席に視線を走らせる。

 そこには彼が読んでいただろうと思われる本が、無造作に置いてあった。
 文庫本よりも細長い形状と地味な表紙から新書だとわかる。チラリと見えたタイトルから想像するに、ビジネス系。
そもそも新書というものを手に取ったことがない蘭々には内容も想像できないし、タイトルの意味さえさっぱりわからない。更にいうなら彼だって意味を理解して読んでいるのかどうかもわからないが、それでも彼女は直感的に思った。

 この男は頭がいい。

 そう思うとなんとなくだが彼の目は、どこか知的なものを感じさせる、ような、気もする。
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