狼を甘くするためのレシピ〜*
 その後も話をしながら、ふと思った。この男とお酒を酌み交わしたら、さぞかし楽しいだろうなと。

 そうするうち、ちょっとした冒険心が疼いてきた。

 ――飲みに行きましょうよと、誘ってみようかしら?

 もし今の私が誘ったら、彼は何と答えるのだろう。

 何しろ蘭々の変装メイクは、ますます磨きがかっている。少なくとも彼の目に、若々しい美人に映ってはいることはない。

 その証拠に今朝、うっかり気を抜きすぎてコンビニで肩をぶつけてしまった男性に、『気をつけろ!ブス』と罵られたばかりである。
 ごめんなさいと、先に謝ったのにもかかわらずだ。

 いくら変装しているとはいえ、ブスと罵られればさすがに傷つく。(ひどいわっ)と心で泣いたけれども、それはともかくとして変装は成功しているということだろう。

 暗い顔をしたド近眼の地味な女。

 男のとぼけた様子が可笑しくて大笑いしてしまったけれども、基本的な印象は変わらないはずだ。

 それでも目の前にいるこの男は陽気だし、蔑む様子は一切見せない。
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