狼を甘くするためのレシピ〜*
「やりたいことが見えてくるといいな」

「うん。ごめんね、仁、我儘言って」

「まあいいさ、しばらくのんびりしたらいい」

「でも、やるからにはちゃんと勉強するから安心して」

「別にいいんだぞ。お前がいるだけで十分な宣伝なんだし。何しろ十四歳からずっと人気モデルだったんだ。疲れただろう。スタッフが対応するし、気楽に店に立ってくれればそれでいいから。店のみんなも蘭々が来てくれるって、喜んでいるよ」

「ありがとう。大丈夫よ。少しずつ仕事を減らしてもらっていたから、疲れてもいないわ」

「どうだ? なんとなくでもあるか? やりたいこと」

「それがね、こうしていざモデルを辞めるとなっても、次は何がしたいのか、何も思い浮かばないの」

「事務職って感じでもないだろうしな」

「あはは、無理よねー。何のスキルもないアラサー女子にはハードルが高いわ」

 蘭々は、ファッションモデルに憧れがあったわけでも、好きで芸能界に入ったわけでもなかった。
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