狼を甘くするためのレシピ〜*
 当時蘭々の家は色々と問題を抱えていて、いつでも自立できる道を選ばざるを得なかった。
 いつ路頭に迷うことになるかもわからない。そんな不安を抱えて歩いていたある日、のちに蘭々が所属することになる事務所の社長に出会う。

『あなた、ファッションモデルになってみない?』
 そう、声をかけられたのがきっかけとなり、モデルになった。

 十四歳の少女が自立できる道など、限られている。

 そういう意味では、生まれながらのずば抜けた美貌を持っていたことが助けになったわけだが、とにかく彼女には他に選ぶ道はなかった。

 友達と楽しく遊んだという記憶もほとんどなく、ただ、掴めそうで掴み切れない“安心”とか“平和”という物を追い求め、必死に過ごしてきた日々。

 ふと思う。

 終わってみて、手に入れたものは何で、何が残ったのだろう?

 失ったものは何だったのだろう?
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