狼を甘くするためのレシピ〜*
 仁の友人、源径生にはいくつもの顔がある。

 そのうちの一つの顔は田舎暮らしだ。
 その田舎と蘭々の叔母の住む町が、仁の頭の中でひとつになり、――愕然とした。

 ふと蘭々の体のラインに目がいく。

 艶やかで輝くような肌。
 形のいい胸、細いウエストから腰、さらに足へと続く流れるようなライン。

『とびっきりのいい女だよ』径生はそう言った。

 ――当然だ。

 そんな体を持っている女は、そんじょそこらに転がっていない。

 コーヒーカップに伸ばした蘭々の手を見つめながら思う。

 ――蘭々。お前がどんなに化粧で誤魔化そうと、俺ならその綺麗な指先ひとつを見ただけで、お前の正体を明かそうと思うぞ。

 恐らくネイルはしていなかったんだろうが、そういう問題じゃない。

 むしろ男はそんな表面上の細かいところなど、見ているようで見ていないし、記憶には残らない。
 手を触った時のぬくもり、柔らかさ、そういうところは忘れないけどな。

 そう思いながら、仁はゴクリと喉を鳴らした。
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