狼を甘くするためのレシピ〜*
 車の中から、店の中に入って行く蘭々を見届けて、仁は初めて蘭々を見た日のことを思い出す。

 青扇学園の高等部の入学式だった。

 講堂に並んだ椅子の、蘭々が座っていたのは仁の斜め前の席。

 幼稚舎からずっと青扇にいる仁とは違って蘭々は高等部からの入学である。

 見かけない子だと思ったと同時にその横顔には見覚えがあって、『あぁ、モデルか』と、雑誌の表紙を思い出した。

 その時はただそう思っただけだ。

 クラスが同じだと否応なしに視界に入る。
 仁の目に映る彼女は、じっと息をひそめている静かな生徒だった。

 何を思うのか、いつだって能面のような無表情な顔をしていたが、ひとたびモデルLaLaになった時の彼女はカメレオンのように姿を変える。

 時にはあどけない少女のまま、ある時は妖艶な大人の女性に。
 太陽の光を浴びれば鮮やかに、月の光を浴びれば透けるように光り輝く。

 女には色々な顔があるんだと、少年ながらに感心したものだ。
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