幸福論
「よし!お待たせ!
ありがとうなぁ。水にお帰り。」





魚を再び抱えた彼は
名残惜しそうに魚をそっと帰した。


一部始終を見ていた私は
さっきまで彼に抱いていた警戒心なんて忘れていて。


彼は私に笑顔を向けた。






「ロクマル!初めてやねん!」





私に近付いた彼は
さっき撮った写真を見せてくれる。






「今日はロクマル記念日やなぁ!」





なんて嬉しそう。






「ロクマル釣ったことあるん?」

「.........ロクマルってなんですか?」

「........................んえぇ!!嘘やろ!
釣りする人なら知ってると思ってた!
ましてやこのスポットなんてロクマルのために
あるような所やのに!」







少し間が空いて彼が大きな声を出す。


さっきから彼がしきりにロクマルと言う。
もともと弟の付き添いの私は
釣りに詳しいわけでもなく。






「ロクマルってのはなぁ、
ゆうたらブラックバスの大きいの!」






60センチを超えたらロクマルや!
と説明してくれた。
< 65 / 448 >

この作品をシェア

pagetop