恋は小説よりも奇なり

「これはここに置いて帰ります。そうすれば“ありがとう”って受け取ってくれる人が現れるかもしれない。
受け取る気がない人に無理やり押し付けられるよりもプレゼントだって幸せだよ……」

捨て猫をやむを得ず公園へ戻さなければならなくなった小さな女の子のような表情。

切なげな瞳をプレゼントへ向けた。

「送ってくれてありがとうございます。さようなら」

満は奏と別れる瞬間まで凛とした態度を貫いた。

彼女が去っていく背中に奏が声を掛けることはない。

引き止めることもしない。

それをしてしまえば後戻りが出来ない気がした。

奏の気配が段々と満から離れていく。

置き去りにしてきたプレゼント。

弾き返された言葉。

今にも溢れ出しそうだった涙がついに満の頬を伝った。
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