大嫌いの裏側で恋をする


***


歩いて休憩スペースに向かってると、部屋として区切られてはいるもののドアはクリアなので中が見える。
……高瀬さんが、もう来てる。

「お、お疲れ様です! すみません、遅くなりました!」

勢いよくドアを開けて飛び込んだ私に、高瀬さんは驚いたように瞳をパチパチさせる。

「いや、待ってねーよ」
「え、あ、はい」

ちょっと意気込み過ぎてて恥ずかしい。
乱れた前髪に手を当ててると「ほら」と自販機で買ったっぽいカフェオレと、小さな紙袋を渡される。

なんだろうって、紙袋を見ると。

「あー! ブラウンカフェのクッキーシュー!! 何で!?」

それは、個人店ながら雑誌にもよく載ってる駅前にあるブラウンカフェのクッキーシュークリーム。
大人気だから、いつも帰る頃には売り切れちやってることが多いんだけど。

「好きなんだろ? 吉川に聞いたから」
「そ、そうなんですか……その、わざわざすみません」
「いや、お前最近疲れてそうだって吉川に話したら、あいつも心配してた」

紙袋をギュッと握りしめるように持つ。
心にまたひとつ、声にできない素直な心。

「間宮とは、どうだ?」

黙ってると、次は間宮香織。

「あ、えーっと、どうって、どうだろ? 何とかやれてますよ! 嫌われてますけど」

あはは、と私が笑うと。
高瀬さんが「あー、やっぱりなぁ」って呟きながら。
壁からちょっとだけ出てる簡易的なイスというか、台に腰掛けて息を吐く。
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