大嫌いの裏側で恋をする

『あれこれ詰め込んでも最近忙しいのに身体が休まりませんよね、行き当たりばったり、その時の気分で行きましょう!』

前日の夜、つまりは昨夜。 直帰だった俺が連絡したら石川の返信はこうだった訳だ。

ちらりと見れば楽しそうに首を傾げて悩む姿が目に入る。

「えー、えっとですね、んー、ランチ?」
「おー、時間的にそうだな。 何食う?」
「チーズとか卵とか」
「素材聞いてんじゃねーよ」

あはは、と笑い声が聞こえて。
「この間は私の好きなもの食べに行ったから今日は高瀬さんの好きなものにしてあげます!」と、さらに笑った。

この間、っていうと。
昼飯に誘った時のこと言ってんだと思うけど。
上目遣いで睨まれて、こう、なんていうんだ? 女に負けたと感じたことは初めてだったし。
何なら、これからきっと、そうやって何度も『負けた』と感じ続けるんだろう。
いわゆる、あれか。 惚れたもん負け状態。
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