大嫌いの裏側で恋をする


ぱぁ、っと表情が明るくなる。
これは意外だった。 と、口にすれば膨れそうだから黙ってるけど。 どうも自然と戯れてるイメージがない。
つーか、行きたいとこあったなら言えよ。
変な気遣いやがって。

「海?」
「はい、だって私は車なんてないから遠出って最近ほんとしてないんですよね。 ドライブも、悠す……
「……なに?」

一変、笑顔だった石川の口元が固まる。
ああ、マジか。 これ、多分。

「あ、えっと」
「前の男?」

アクセルを踏み流れ出した景色を見ながら、聞く。

「……そうです、すみません、元カレの話いつまでも出す女とか虚しいですよね、普通に」
「別に、長かったんならしょーがねぇんじゃないの。 お前の生活の一部だったんだろうし」

正直、おもしろくねぇけど。
避けて通りたいし聞きたくもないけど。
でもそれ以上に俺は、お前のこと、知りたいし。
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