大嫌いの裏側で恋をする

「……も、元カレは、車持ってなかったので男の人に車乗せてもらうの慣れてなくて珍しくて、実は結構ドキドキして、て」
「ふーん、そりゃよかった」
「さっきから返事が適当すぎません!? いや、楽しいからいいんですけどね」

怒ったり、笑ったり。
そんな横顔を眺めて、また前方に視線を戻す。

車なんて、そんなもん、いくらでも乗せてやるし。
行きたいところがあるんなら、俺が連れて行ってやるし。

小さく流れてた音楽の音量を、少し上げる。走行音でかき消されてたテクノ混じりのロックが軽快に響いて。

お前がいるだけで、乗り慣れた自分の車も新鮮味を増すし。
見える景色も明るく映るような気がするし。
死んでた俺の休日の昼だって、陽に照らされる意味を持つ。

……ような、気がすんだから。

女に惚れ込むなんて、本気で未知の世界だ。

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