大嫌いの裏側で恋をする


突然の声に振り向くとパスタ屋さんから秋田さんが出てきた。
関連会社の課長さんで、高瀬さんとはクズ仲間だった模様の、秋田さん。

「な、なんで……?秋田さんがおひとりパスタ?」
「ううん、お二人様だったけどね。ちょっと先に帰っちゃって」
「は、はあ……」
「俺は全く食事に手をつけてなかったから、まあいいかって食べてたら石川ちゃんとお友達が入ってきたんだよ」

そう言って秋田さんは目を細めて笑顔を作る。
にんまりと、そりゃもう。
おもちゃを見つけたって、そんな目だ。

「ちょっと待ってください、それじゃ、その……私たちの会話、全部」

そんなに大きなお店じゃない。
端と端、とかの距離がなければ声なんて聞こうと意識していれば多分……

「なかなか興味深かったねぇ。俺は、売れ残ったクリスマスケーキ世代が大好物なんだけど」

あ、ダメだこれ聞かれてる。

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