大嫌いの裏側で恋をする



***


電車のドアの両端、互いに窓の外を眺めながら無言で手すりに体重を預けてる。

金曜日の夜9時だし。
電車の中はそれなりに混雑してて、沈黙を気まずく思わなくていいほどにはザワザワとしてる。

けど、どう見ても。
最高に機嫌の悪い高瀬さんは、待ってたって、もちろん何も話してこない。
……まま、電車に揺られ続けた。

直行直帰わりと多いし、いつも営業車乗り回してるイメージだけど今日は一緒に電車で高瀬さんのマンションに帰る。

高瀬さんはあんまり電車が好きじゃないようで、2人で出かける時も大体車だから。
なんか新鮮じゃない?

……とか思って、楽しみに1週間頑張ったのになぁ。
空気が重すぎて、私の身体も重くなってくる。

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