大嫌いの裏側で恋をする


「おい。秋田さん、何で一緒だった?」

唐突な声は、やっぱりというか。秋田さんのこと。

「いや、友達とご飯してたら、たまたま同じ店にいたんです」
「結婚て何だよ。なんで秋田さんとそんなこと話してんだ」
「み、みんなでそんな話題になってたから……」

ふーん、と言ったきり。また黙ってしまう。

「何でそんな機嫌悪いんですか」
「悪くねぇよ」
「でも」
「もういいから黙ってろ」

(はあ?黙ってろ?)

なんでそんな言い方されなきゃならないのか。
一応、高瀬さんから話しかけてきたくせにさ!

私だってだんまりを決め込んで電車に揺られた。

最寄りの駅について、改札を出て、並んで歩く。
拳2個分くらいの、なんていうのか。ギリギリ触れ合わない妙な距離感で歩いてると。
腕を掴まれ引き寄せられる。

高瀬さんは、結構すぐに怒るし距離を取る人だけど。それを縮める時はこんなふうに力任せに引き寄せてくるんどけど。
< 211 / 332 >

この作品をシェア

pagetop