大嫌いの裏側で恋をする



「……何ですか」

そうゆう力尽くな感じに、不本意ながらキュンときてしまうオンナゴコロ。
短く聞いた声の中に、浮かれたものを見つけられてはいないだろうか。
私は今、一応、怒っていることになっているので。

「何ですか、じゃねーよ。勝手に離れて歩くなアホ」

前を向いたまま、掴まれた腕から高瀬さんの手が徐々に下がって。私の指に絡まる。
同時に腕が、肩が触れ合い距離が埋まった。

その、さり気なさ。
何とかして欲しい。怒ってるはずなのに、ドキドキして、吹っ飛んじゃう。

「だって高瀬さん、機嫌悪いからめんどくさくて。別に秋田さんは」
「あー、わかってる。わかってんだけど、お前もうちょい危機感もてよ」
「だからそんな雰囲気微塵もなかったですって!」

私が少し大きな声で返すと、絡まってた指に力が入る。

「お前になくてもあっちは色々あんだろが」
「いやいや、色々って何です?何でそんな秋田さんのこと敵視して……」
「――っ、してねぇよ!」
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