大嫌いの裏側で恋をする


聞き返した私を見て、高瀬さんは気まずそうに目をそらす。
そして、口元を押さえながら何やら。
らしくなくゴニョゴニョと言うのだ。

「あー、何だ、これ何つったら正解だ?」
「はい?」

聞いたのだけど、聞き返されて私もまた同じように返した。

「前も言ったけどな、お前さ。俺が女に慣れてるだの何だの言うけど、惚れた女の扱いはマジでわかんねぇんだよ」
「ん?」
「どこまでなら、いいんだ」
「な、何がですか」

主語がない問い掛けに、私はもちろん聞き返すんだけど。

「だから、どこまでならウザくねぇのか聞いてんだよ」
「ウザい?は、え?何?私が高瀬さんをウザいって?」
「そうだって言ってんだろ」
「いやいや、今初めて聞きましたけど!?」

立場もないくせに。思わず大きな声を出すとチラリと私を見た高瀬さんは、せっかく整ってるサラサラの髪の毛をグシャグシャと乱して唸る。

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