大嫌いの裏側で恋をする
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「……はあ、最悪」
呟いた私のお腹が、ぐぅ、と音を鳴らした。
どれだけ気分が落ちていようとも、こうしてお腹は空くのだから素晴らしい。
夜8時半。
週末、金曜日の夜とあっていつもより人が多い。
あれから数日、吉川さんに教えてもらいながら経理部とやり取りし、請求書を作り直し。
その請求書を直接高瀬さんと課長が客先へ持って行って謝罪したりと、まあ少しバタバタと過ごした。
そして今日。
落ち着いたし週末だし、パーっと飲みにでも行こっか! と、笑って誘ってくれた吉川さん。
私は、それを断って1人で帰ってきてる。
『ごめんなさい、私慣れない頭使って疲れちゃったみたいで。 今日は遠慮しときますね』
なんて、白々しい逃げ文句を極力、明るい声で言ったと思う。
力を入れて、笑顔を作ったと思う。
『え、そうなの? 残念! 大丈夫?? じゃあまた今度にしようかなぁ』
本当に残念そうに笑った吉川さんを見ないようにして会社を出た私を、彼女はどう思ったんだろう。
高瀬さんの目には、どう、映ったんだろう。
……と、回想した別れ際を小さく首を振ってかき消した。
醜い心にも、芽生えかけた〝何か〟にも。
きつく蓋をする。
きつく、きつく、きっと。
今なら、そうして閉じ込めておける。
賑わう街を、逃げるように駆け出した。