大嫌いの裏側で恋をする


(しっかし、機嫌悪くなるな)

俺は隣のデスクで黙々と仕事をする石川をチラリと見た。

こっちの仕事を事務に振ってしまえば、俺は今月も何とか生き延びたなぁとか、飲みにでも行くかってなるわけだけど。
こいつと付き合いだしてから、それは数日伸びるようになった。

何故かって、そりゃ、俺の手が空いた今からの数日。 次はこいつがバタバタするからだ。

「明日ってお前土曜出勤の日?」
「そうです、末締めあるんで」

ピシャリと返ってくる。
もちろんパソコンをガン見したままこっちを見る気配もない。

(いや、別にそりゃいーんだけどよ)

いいんだけど。

「んじゃ、俺も今日は飲むの我慢して明日出てくるか」
「え? なんでです? せっかくなんだから奥田さんと飲みに行けばいいのに」
「単価調整のせいで後回しにしてた仕事死ぬほどあるし」
「そうですか」

会話が続きやしねぇ。
いや、別にいい。 いーんだよ、いいんだけどよ。

「休みどうすんだよ」
「ん?」
「明日の夜はいけんのかって聞いてんだけど」
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