大嫌いの裏側で恋をする

更に。

震えてた声が、嗚咽のせいで途切れ出してしまう。

どうしよう、どうしよう。

喋ることをやめてしまえばいいのに。

黙ることも、泣くのを堪えることも。

どっちもできないで。

「た、高瀬さんだって……こ、こんな虚勢ばっかの能無し事務員に、つき、付き合わされて、そりゃイライラしますよね」

下を向いてたって、泣きじゃくって愚痴ってるのが丸わかりだ。

「それどころか、わ、わた、私……羨ましいとか……ちが、違うきっと妬ましく思って……思ってて……! 吉川さんのこと好きなのに大好きな先輩なのに、私の為に今回だって残業してくれて」

零れた涙が次々とスカートの上に落ちて、落ちて、染みを作り続けてるのに、止まらない。

「たか……っ、高瀬さんも、いざとなったら吉川さん頼っちゃうし、悔しいだなんて、思っちゃって」

吐き出した後に、恥ずかしさと情けなさから背中を丸めて膝におでこをつける。

なんで、我慢できないの。

悠介と別れた時もそうだった。

高瀬さんの前で弱音を吐いてばかりいる事実に、心臓のずっと奥が、ザワザワと何かを訴えてるような気がして落ち着かない。

チラッと横目で高瀬さんを見上げると。

泣きながら長ったらしく話してた私を見ないで、前を向いたままハンドルに頬杖をついていてる。

呆れられた? って、ビクビクしてると。

少しの沈黙の後、それで終わりか? と。

いつも通りの声で言った。
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