大嫌いの裏側で恋をする
「終わり……です、ね」
「あっそ。 んじゃ、まずなぁ。俺の2、3年前なんてお前なんか比じゃないくらい生意気で、いっそ浮いてたな」
「……え? 高瀬さんが?」
想像もつかない。
今は、いつも課の真ん中にいて、なんでも器用にこなすイメージしかないのに。
「つーか課長には死ぬほど怒られてるし、30手前で、お前とそう変わらない」
「いや、全然頭の良さは違うかと思いますよ……」
丸めてた身体を正して、指で涙を拭って。
高瀬さんのことを、見る。
「吉川を頼ったように見えたなら悪かったな。俺が経理に確認して指示出すより、吉川が間にいた方がお前の気が楽だと思った」
「……い、え。 私の方こそすみません」
会社では普通なんだけど、2人になると心なしか高瀬さんの言葉も直球な気がするから。
社外での姿に慣れない私は、視線をどこにやればいいのやら。
化粧だってきっと取れちゃってるし。
もう色んなドキドキが入り混じってしまって把握しきれない。
そんな私の様子を知りもしないだろう高瀬さんが次に放った言葉。
声色が低く変化したから嫌でも頭の中に大きく響いた。
「あと、吉川に対するお前の評価は傲慢だな」
「……え? ご、傲慢??」