月がキレイな夜に、きみの一番星になりたい。

 他人だから理解できないのは仕方ない。
 そうやってあきらめてしまったら、
永遠にその人のことを理解することはできないって。


「相手に興味をもって、
その考えをわかりたいって思って初めて、
誰かの心に住むことができるんじゃないかな」


偉そうなことを言ってるのかもしれないけど。
私とは違って外の世界にいる夜斗くんなら、
もっと自由に人と繋がれるはずなのに、もったいない。

 その機会を無駄にしないでほしい。
そんなふうに、あきらめたような目をしないでほしい。


「なにがあったのかは、わからないけど……」


 夜斗くんに向きなおると、モイラがパタパタと羽ばたいて
バルコニーの手すりにとまる。

私はモイラに見守れながら夜斗くんの手を取って、
包むようにギュッと握った。


「すべてを理解することはできないかもしれないけど、
夜斗くんを理解したいって気持ちは
もらってくれるとうれしいです」

「蕾……」


みるみると目を見開いた夜斗くんは、
初めて私の名前を 呼んだ。

その瞬間、なぜか心臓がドキリと跳ねた。

なんだろう、この感じ……。

服の胸もとあたりを押さえていると、
夜斗くんがふっとその目を細める。


「お前って、変わってるな」

「そうかな?」

「かなり……な」


微笑を浮かべて、夜斗くんは立ちあがる。
それからお尻についた砂を叩いて、
バルコニーの柵に手をかけた。


「追っ手も撒けたみたいだから、そろそろ行く」

「あっ……また来てくれますか?」


 柵を乗りこえようとする夜斗くんに、
勇気を振りしぼって声をかけた。

 すると夜斗くんは振り向いて、ふっと笑う。


「気が向いたらな」


そう言って、軽く手を挙げて去っていった。
それを見計らったようにモイラが私の肩に飛んでくる。

「モイラ、今日は夜斗くんにも会えたし、
素敵な夜になったね」

「ステキ、ステキ」

「ふふっ、そうだね」


私の知らない外の世界からやってきた、
夜を擬人化したような人。

 もっともっと、きみのことを知りたい。


「また明日、来てくれるといいな……」


 満天の星空の下に現れた、突然の訪問者。

想像もしていなかった出会いに、
本の1ページをめくったときのような
胸のワクワクを感じながら――。

 私は夜斗くんが姿を消したバルコニーの柵に手をつき、
いつもより優しい夜風に目を閉じたのだった。

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