月がキレイな夜に、きみの一番星になりたい。
「そうします」
「たしか、狼牙の仲間のことだったな」
「は、はいっ」
「どんなって聞かれると、言葉にするのは難しいが……」
考えるように視線を宙に投げた夜斗くんは、
すぐにふっと笑みをこぼす。
「ひと言で表すなら、人を大事にできるいいやつらだ」
さっきまでの冷たい瞳が嘘みたいに、
柔らかくなる。
「夜斗くんにとって、すごく大切な人たちなんですね」
彼の表情を見たら、それは一目瞭然だった。
「そうだな……俺を受けいれてくれたやつらだ。
だから、 これからは俺も仲間のために強くなる
って決めてる」
自分の拳を見つめて、
誓うように言った夜斗くんの目には
決意が浮かんでいた。
「その気持ち、きっとみんなにも届いてると思います」
「そうだと、いいんだけどよ」
私たちの周りにある空気が穏やかになる。
それはむきだしだった夜斗くんの警戒心が、
少しだけ薄れたからかもしれない。
「そう言えば、質問もうひとつあったな。
たしか……バイクに乗るのかって話だったか」
思い出したように尋ねてくる夜斗くんに、
私は強く首を縦に振る。
「あ、はい!」
「俺も乗りまわしたいのはやまやまなんだけどな。
総長から『暴走族だろうが、犯罪には手は染めるな』
ってきつく言われてんだよ。
だからちゃんと、16になってから免許は取る」
夜斗くんは苦い顔で髪をかきあげる。
最近の暴走族は意外と真面目らしい。
「その総長さんは、みなさんの将来のことを
ちゃんと考えてくれてるんですね。
なんか、お父さんみたい」
「そうだな……あの人が父親だったら……」
一瞬、夜斗くんは思いつめたように
遠くを見つめた。
「大丈夫?」
心配になって声をかけると、
夜斗くんは首を横に振った。
「なんでもない、気にするな」
なんでもないような顔じゃなかった。
だけど、触れられたくないことなのかもしれない。