『未成年』なんていらない
「悪い成瀬!これ、閨川先生に返しといてくれないか?俺この後忙しくてな!」

鬼丸に押し付けられたのは化学の教科書だった。
ひなりは私も忙しいのでと断ろうとしたが、鬼丸は頼んだからなとすぐに去って行ってしまった。

…どうしよう…れいま先生と気まずいのにな…

夏休み前のひなりなら飛んで喜んでいたことだが、今は胸が苦しかった。
大して仲良くないクラスメートたちから軽蔑されるのはどうでも良かった。
しかし、閨川や親友のレムにはこれ以上軽蔑されたくなかった。

先生…大好きだけど…今は会いたくない。

ひなりは大きなため息をつくと、教室へと戻っていった。
< 148 / 172 >

この作品をシェア

pagetop