mimic
「えっ! 菅野さんの彼氏さん、庭師じゃなかったんですか⁉︎ CEOだなんて……‼︎」


どひゃーっという、悲鳴のような歓声のような、コントみたいな声を上げた千葉さんに、海月はにっと片頬で笑いかけた。

さっき泣いてしまったわたしを冷たい目で見ていた女子社員たちからも、驚きと感嘆が交ざり合った声が上がる。

CEO? CEOってなんだっけ……?

とにかくいつまでも鈍く、いつも騙されやすいわたしの肩を抱き、海月は歩き出した。


「帰ろう、小夏ちゃん」
「ったく、こういうことはもう勘弁してよね」


海月と星香さんの声がリンクする。


「お支払いはお済みですので、引き続きどうぞごゆっくりなさってください。今後ともご宴会の際には是非ご贔屓にしていただけると幸いです」


個室を出るとき、ホームセンターの従業員たちに継ぎ目なく言った彼女は、ロボットみたいな正確な角度でお辞儀をした。


「__ほんとうにもういい加減にしてよね」
「え? なにを?」
「なにって……あなたのプライベートに付き合わされることです!」


なので、わたしはそう、絶叫するように言った運転席に座り、高級車のハンドルを握る人物がさっきと同一であるかどうか、とても疑わしく思って動転した。


「はは、そんなに興奮するなよ、星香」


後部座席で、握ったわたしの手の甲を自分の唇にあて、海月は言った。
恥ずかしいから、ほんとうは早く離してほしい。


「今回の海外企業との事業は前社長の肝いりなのよ。こんな大きな案件、社長のあんたがいなけりゃ話が進みません。それなのに会議に穴を開けられては、各所に頭を下げて回る私なんてもう胃にふたつめの穴が空きそうだわ」
「そう? お大事にネ」
「海月‼︎」
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