mimic
「ありがとう、星香。これからは注意するよ」


シートベルトを外した海月は、詫びるともつかずにそう言った。

海月が車から降り、わたしの方のドアを開ける。星香さんにお礼を言い、わたしも降りようとしたとき。


「あんなこと申し上げて、すみませんでした。兄にちゃんと仕事して欲しいばかりになんだか、余計なことまで口走ってしまい……」
「い、いえ。いいんです、そんな……。ありがとうございました」


わたしがぺこりと頭を下げると、ルームミラー越しに目を合わせ、星香さんは頷いた。心ばかり、目を細めて。
すこしだけ、困った風に笑うときの海月の目の形に似ていた。


「ただいま。ふう、疲れた」


玄関のたたきで靴を脱いだ海月は笑いながら言い、すたすた先に歩いて居間の電気を点けた。
わたしが追いつくと、振り向いて、準備してたみたいに器用に微笑む。


「なにか、飲む?」


声が裏返った。
たかが一日ふつか、会わなかっただけなのに。ひどく緊張しちゃう。


「ううん」
「今日はもう、仕事はいいの?」
「うん」


こくりと無防備にかぶりを振った海月は、前髪を揺らしてふっと笑う。


「ねえ、それより早く、抱きしめさして」


両手を広げ、飛び込むには万全の体勢。
今にも吸い寄せられそうで、わたしは爪先をうずうずさせる。

けど……。
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