mimic
「あの、さ。さっき星香さんが言ってた、一部の酒販会社と取引を中止しようとしてた、って話……もしかして、唯ちゃんの会社?」


わたしは、初めて会ったときから、靴に違和感を覚えていた。庭師のお仕事してるのに、高級な革靴? って。
ワイシャツにスラックス姿で来たのは、唯ちゃんに寄せてるって解釈したけど、ほんとうは違ったんだね。

星香さんのことは、わたしが勝手に婚約者なんじゃないかって早とちりしただけだけど、そもそもそれは、海月がわたしに職業を偽っていたからで。

だから。


「もう、隠し事しないで、ちゃんと説明してほしいの」


交わってもまだ足りないような、どんなに触れても手に入らないような、そんな雲を掴むようなたゆたう存在に感じてた原因は、きっと。海月がまだ、わたしに隠し事をしていたからなんじゃないかなぁ、って思うんだ。わたしの本能が。

両手を下ろした海月は、不服そうに頭を掻いた。


「実は前に……ほら、俺が小夏ちゃんを前の職場に迎えに行ったときあるでしょ? あのとき聞いちゃったんだ。唯彦さんが、小夏ちゃんを取り戻そうとしてたのを」
「え……?」
「だから、釘刺しといただけだよ」
「だ、だからって」
「小夏ちゃんを取られるくらいなら、なんだってするよ、俺は」


伏し目がちに言った海月が、わたしに目線を寄越す。
その挑発的な目つきに狂愛のようなものを抱き、ゾクッとした。


「そ、そういえば……」


あのあとで突然、唯ちゃんからえらく一方的なメールがきた。〝もう関わらない〟って。
それって海月が、手を回したから……?


「さ。他の男のこと考えるのは、終わりにして」


しびれを切らしたように、海月は回想でぼうっとするわたしの手首を掴み、首尾よく引き寄せた。海月の胸元に、こつんと体ごとぶつかる。
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