mimic
無理だよ。
止まらない。止め方がわからない。
「誰も、いなくなっちゃった……」
喉を痙攣させ、子どもみたいに力なく呟いたわたしの肩に、多野木が手をのせた。
「俺が、いるよ」
背中を支えられ、歩いて来たのは駐車場だった。
車種は分からないけど黒いセダンの後部座席に乗せられた。
流れる窓の外の風景をぼんやりと見ていた。
運転しながら多野木が、「寒い?」とか「暑い?」とか、空調についていろいろ気を遣って聞いてくれたけれど、手や足や肌の感覚が鈍くなってしまったわたしにはまったく詮無いことだった。
まるで心が、これ以上傷つかないように、これ以上痛い思いをしないように。
神経のスイッチをオフにしてるみたい。
「着いたよ、小夏ちゃん」
家の前まで送ってくれて、門の前に車を横付けする。
勝手知ったる多野木は、わたしから受け取った鍵を開け、家に入ると電気を点け、わたしを居間のソファに座らせた。
そしてサウナみたいに蒸し暑い部屋の窓を開け、
「今夜も風が気持ちいいね」
赤茶色の髪の毛を申し訳程度の夜風に揺らされて、何事もなかったかのような落ち着いた声で呟く。
両目を柔らかく細めて。
「じゃあね、小夏ちゃん。」
踵を返した多野木のあとを追うように、
わたしは立ち上がった。
「あの、ありがとう……」
止まらない。止め方がわからない。
「誰も、いなくなっちゃった……」
喉を痙攣させ、子どもみたいに力なく呟いたわたしの肩に、多野木が手をのせた。
「俺が、いるよ」
背中を支えられ、歩いて来たのは駐車場だった。
車種は分からないけど黒いセダンの後部座席に乗せられた。
流れる窓の外の風景をぼんやりと見ていた。
運転しながら多野木が、「寒い?」とか「暑い?」とか、空調についていろいろ気を遣って聞いてくれたけれど、手や足や肌の感覚が鈍くなってしまったわたしにはまったく詮無いことだった。
まるで心が、これ以上傷つかないように、これ以上痛い思いをしないように。
神経のスイッチをオフにしてるみたい。
「着いたよ、小夏ちゃん」
家の前まで送ってくれて、門の前に車を横付けする。
勝手知ったる多野木は、わたしから受け取った鍵を開け、家に入ると電気を点け、わたしを居間のソファに座らせた。
そしてサウナみたいに蒸し暑い部屋の窓を開け、
「今夜も風が気持ちいいね」
赤茶色の髪の毛を申し訳程度の夜風に揺らされて、何事もなかったかのような落ち着いた声で呟く。
両目を柔らかく細めて。
「じゃあね、小夏ちゃん。」
踵を返した多野木のあとを追うように、
わたしは立ち上がった。
「あの、ありがとう……」