mimic
シャワーのあと部屋の前を通りかかると、ほんの数ミリ空いた襖の隙間から明かりが漏れていたので、わたしは足を止めた。
息をひそめて、襖の隙間に目をくっつける。
海月の前に置かれたパソコンの画面には、草木の写真とか、図面のようなものが映されている。
「小夏ちゃん。それは、鶴の恩返し運動?」
突然、キーボードを叩く音が止んで、海月が首を動かした。
「覗くくらいなら入ってきなよ」
襖の隙間を通して目が合ってしまい、ギョッとするわたしを他所に海月は目を細める。
「の、覗いてないし! たまたま通っただけだし!」
苦しい言い訳をしてみたけど、バレたことにわたしはかなり動揺した。
しかも、鶴の恩返し運動ってなんだ? あいさつ運動みたいなもん?
ていうか……物音ひとつ立てたつもりはない。なんでわかったのかな。
動物の勘、てやつ?
「まだ、仕事してんのかな、って……」
「うん、ちょっと庭の設計をね」
「そうか、そういうのやってんだ……」
なるほど、と顎に手をあてて納得していると。
「小夏ちゃん、まだ終わりそうにないから先に寝てて」
すんなりと発した海月の悲劇的な一言に、わたしは項垂れたい気分でいっぱいになる。
その間にも海月はもう、こちらに背を向けパソコンに向かっている。
「っおやすみ!」
今度はわざと勢いよく襖を閉め、後ろ髪を引かれつつ二階の自分の部屋に戻った。
息をひそめて、襖の隙間に目をくっつける。
海月の前に置かれたパソコンの画面には、草木の写真とか、図面のようなものが映されている。
「小夏ちゃん。それは、鶴の恩返し運動?」
突然、キーボードを叩く音が止んで、海月が首を動かした。
「覗くくらいなら入ってきなよ」
襖の隙間を通して目が合ってしまい、ギョッとするわたしを他所に海月は目を細める。
「の、覗いてないし! たまたま通っただけだし!」
苦しい言い訳をしてみたけど、バレたことにわたしはかなり動揺した。
しかも、鶴の恩返し運動ってなんだ? あいさつ運動みたいなもん?
ていうか……物音ひとつ立てたつもりはない。なんでわかったのかな。
動物の勘、てやつ?
「まだ、仕事してんのかな、って……」
「うん、ちょっと庭の設計をね」
「そうか、そういうのやってんだ……」
なるほど、と顎に手をあてて納得していると。
「小夏ちゃん、まだ終わりそうにないから先に寝てて」
すんなりと発した海月の悲劇的な一言に、わたしは項垂れたい気分でいっぱいになる。
その間にも海月はもう、こちらに背を向けパソコンに向かっている。
「っおやすみ!」
今度はわざと勢いよく襖を閉め、後ろ髪を引かれつつ二階の自分の部屋に戻った。