mimic
わたしはコマ送りみたいなぎこちない動きで、声の主の姿を辿った。
最初に、よくうちの玄関のたたきに置いてあった、革靴が目に入った。とても丁寧に磨かれ、黒光りしていたからだ。
「た、多野木……!」
ようやく絞り出したような震えた声で言い、唯ちゃんは唇を噛む。
「いいんですね、こっちはこうなりゃどんな手でも使いますよ。はは」
掠れた語尾は乾きまくってて、全然笑っているようには聞こえない。
海月はさっきわたしが式場を覗いたときと同じ細身の黒いスーツ姿で、顎を上げ、盛大に目を細め、唯ちゃんに対し軽蔑するような冷酷な目を向けている。
「あんたみたいな引き際も知らない最低な人間ひとり潰すくらい、造作ないんでね」
そして、狼狽するわたしを一瞥もせず、感覚だけで引き寄せる。
「とっとと失せてもらえますか。目に入るのもおぞましいんで」
唯一の反抗なのか、舌打ちをひとつ披露した唯ちゃんは渋い表情で立ち去ると、社用車の運転席に乗り込む。
発進したのを見計らって、海月はわたしの顔を覗き込んだ。
「あんなんとふたりきりで、なにしてるの、小夏ちゃん」
「……っ」
なんか、どうしちゃったんだろ。
見つめられただけで泣きそうになる、なんて。こんなに感情的になって、昂ぶるなんて。
海月をすごく欲してたって自覚して、弱い女みたいで、やだ。
「泣いたの? あいつの前で。」
「っ!」
最初に、よくうちの玄関のたたきに置いてあった、革靴が目に入った。とても丁寧に磨かれ、黒光りしていたからだ。
「た、多野木……!」
ようやく絞り出したような震えた声で言い、唯ちゃんは唇を噛む。
「いいんですね、こっちはこうなりゃどんな手でも使いますよ。はは」
掠れた語尾は乾きまくってて、全然笑っているようには聞こえない。
海月はさっきわたしが式場を覗いたときと同じ細身の黒いスーツ姿で、顎を上げ、盛大に目を細め、唯ちゃんに対し軽蔑するような冷酷な目を向けている。
「あんたみたいな引き際も知らない最低な人間ひとり潰すくらい、造作ないんでね」
そして、狼狽するわたしを一瞥もせず、感覚だけで引き寄せる。
「とっとと失せてもらえますか。目に入るのもおぞましいんで」
唯一の反抗なのか、舌打ちをひとつ披露した唯ちゃんは渋い表情で立ち去ると、社用車の運転席に乗り込む。
発進したのを見計らって、海月はわたしの顔を覗き込んだ。
「あんなんとふたりきりで、なにしてるの、小夏ちゃん」
「……っ」
なんか、どうしちゃったんだろ。
見つめられただけで泣きそうになる、なんて。こんなに感情的になって、昂ぶるなんて。
海月をすごく欲してたって自覚して、弱い女みたいで、やだ。
「泣いたの? あいつの前で。」
「っ!」