mimic
海月の神経をとやかく言える立場じゃないじゃん。元はと言えば、あんたが根源じゃん、と言いたいのを反抗されたら面倒だから我慢して喉元に止め、わたしは睨んだ。

すると。


「なんだ。それだけなら問題ない」



反抗するどころか相手はすんなりそう言った。


「嫌われてるわけじゃないんだろ? 俺ら、家族も同然だもんな。ま、簡単には嫌いになれないよな」
「は……? なに開き直ってるの?」


怒りを通り越して呆れ、力なく言ったわたしはぽかんと口を開けた。


「だって、信じられないってだけなら、また信用してもらえるように頑張りゃいいんだろ?」


……この人、どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
一度でも、一生一緒にいたいと思った自分が一番信じられない。

もう、ほんと面倒……なに言ってもダメだね。


「唯ちゃん、わたし」


言いかけたとき、唯ちゃんの表情が一変に曇った。


「あなたとやり直す気なんて、」


不思議に思いながらそれでも言葉を繋ぐと、相手の顔からはみるみるうちに血の気が引いてゆく。


「ないから。」
「あれー? 言いましたよね。」


きっぱりと言った、わたしの言葉とほぼ同時。
聞き慣れた声が、駐車場の暗がりに響く。


「今後一切、小夏に関わるなって」
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