mimic
「お肉盛り盛りのコースにしてあるから、いっぱい食べて飲んで帰ろね!」


千葉さんが明るく言う。
阿部店長と距離を取れて、わたしはほっとした。

ぞろぞろと大勢で会場に入る。
人気でなかなか予約が取れないと言った千葉さんの前触れ通り、店内は満席で賑わっている。
店員さんに案内され、広い個室に入った。


「ここ、すっごくお洒落な中庭があるんですよー! ホームページに載ってました」


阿部店長を取り囲むようにみんな席につき、飲み物を頼む。コース料理が順番に運ばれてきて、そのたびに歓声が上がった。
千葉さんが食べたかったチーズたっぷりピザとか、ステーキとか、アボカドサラダとか、どれもボリュームがあってお洒落な盛り付けで、お酒もどんどん進んだ。


「菅野さん、次なににする? 一緒に注文しないー?」


千葉さんはワインがお好きみたいで、わたしがビールをまだ半分も飲み終えていないのに、すでに二杯目を飲み終えて頬がほんのり赤くなっている。


「わたしはまだ大丈夫です」
「そう? じゃあ先に頼んでいいかな?」
「はい、どうぞ」


笑顔で頷くと、千葉さんはほかにグラスが空いた人たちに声をかけた。


「阿部店長、お幾つなんですか⁉︎」
「ここに来る前はどこの店舗でお仕事されてたんですか?」


中心の席から女子社員たちの楽しそうな声が上がる。
囲まれている阿部店長はビールグラスを片手に持ったまま、困惑したような表情で苦笑いしている。

みんな、阿部店長の素性をもちろん知っていて、この飲み会をきっかけにお近づきになろうとしている魂胆が見え見えだ。


「わあ、モテモテだぁ」


その光景を見て、千葉さんが不貞腐れたように言う。
< 98 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop