冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンのことを思い浮かべたあとで、軽く閉じていた瞳をそっと開けば、思いがけずして自分を見つめるエリックと目が合った。

エリックはしばらく真顔でクレアを見つめると、

「そんな風に、僕も誰かを愛してみたいもんだな」

どこか寂しげに、笑って見せた。



そこで、会場内がにわかにざわつきはじめる。

見れば、ホールの入り口から従者が厳かに列を成して入って来ていた。中ほどには、屈強な騎士たちに守られるようにして、見事な臙脂色のドレスに身を包んだ女性がいる。

「今宵の主賓、王妃のおでましだ。僕たちも挨拶にうかがおう」

エリックはクレアの手を引き、人ごみの中へと紛れ込んだ。
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