冷徹騎士団長の淑女教育
(ああ、この人は……)

生みの母親の屍がある場所に連れて来られ、クレアは淡い期待を抱いていた。アイヴァンが心に秘めた弱さを、クレアにさらけ出してくれるのではないかと。

クレアは、彼の悲しみにどこまでも寄り添うつもりでいた。だがアイヴァンは弱音を吐くどころか、死してもなお自らの母親を非難した。

それは、クレアに教えるためなのだ。

――淑女たるもの、強くあれと。

(この人は、どんな時でも私の教育者であろうとするのね……)




奈落の底に突き落とされるような悲しみが、クレアの全身を蝕んだ。

どんなに慕っても、クレアの想いに気づかない彼が憎い。クレアを女として見てくれないことが悲しい。

だがもう、無理なのだ。どんなにあがこうと、アイヴァンにとってのクレアはそういう存在にはなりえない。

クレアは数日後にはアイヴァンと別れ、間もなくしてアイヴァンは結婚する。

――もう、無理なのだ。



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