冷徹騎士団長の淑女教育
アイヴァンがいかに文武両道で優秀であるかや、この国を統治している王と王妃のすばらしさなど、レイチェルの話は尽きる気配がない。

そして、気づけばあっという間に夕方を迎えていた。

アイヴァンが再びこの別宅に来たのは、ちょうどその頃だった。




「……何をしている?」

夕食の支度を始めたレイチェルを手伝おうと、クレアが厨房でじゃがいもの皮むきをしていると、背後から突如低い声が聞こえた。

見れば、表情の険しいアイヴァンが立っていた。厨房は邸の中でも奥まった場所にあるので、馬の音に気づかなかった。

クレアは慌てて立ち上がると、おずおずと切り出した。

「その……、じゃがいもの皮むきをしていました」

縮こまるクレアに、アイヴァンはなおも冷たい視線を注ぐ。

そしてふいに、クレアの両手を取ってまじまじと観察しはじめた。クレアの小さな両手は、日々の労働のせいであかぎれだらけだ。お世辞にも、綺麗とは言い難い。

恥ずかしさからクレアが俯けば、頭上から落ち着いたアイヴァンの声が降ってきた。

「昨日、俺は何と言った?」

「………」

「食事以外は、勉強に費やせと言ったんだ。家のことは、この先一切してはならない」

「……でも」

「君は、俺に反論できる立場にはない」

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