冷徹騎士団長の淑女教育
クレアとダグラスを乗せた馬車は、アイヴァンの別宅からぐんぐん遠ざかっていた。

煉瓦道を行き、クレアが毎週通った教会の前を横切る。

そこで、クレアは教会前の噴水広場に見知った顔を見つけた。エリックだ。

今日も貴公子らしい優雅な笑顔で、数人の子供たちと何かを話していた。

大公子息という高貴な身分ながら、こうやって街を放浪して子供と語らうなど、やはり彼は少し変わっている。

だが、どんなに騙されようと、クレアは不思議と彼のことが嫌いではなかった。

エリックは自信家ではあるが、他の貴族のように奢り高ぶったところがない。その点に関してはアイヴァンに通ずるものがあり、親近感を覚えるのだった。




すると、窓越しにエリックと目が合う。

(彼と会うのも最後かもしれないわ)

クレアはひらひらと手を振った。もう少し違う形で出会えていたら、ちゃんとした友達になれていたのに、と思ってしまう。

クレアに気づいたエリックが、口の動きを止め目を見開いた。そしてすぐに立ち上がり、こちらへと駆けだしてくる。

驚くのも無理はないと思う。クレアは、今までほとんどアイヴァンの邸を離れることがなかったのだから。

エリックは、走りながら何かを叫んでいるようだった。だが煉瓦道を駆ける馬車の騒音にかき消され、何を言っているのか分からない。

間もなくして馬車は追いつけなかったエリックを置き去りにして、アルメリアの郊外を更に進んでいった。


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