冷徹騎士団長の淑女教育
近づけば近づくほどに、気味の悪い邸だった。まず、窓が極端に少ないのが不自然だ。

土道に残る馬車の痕跡を追っていたアイヴァンは、やがて車輪の跡が途絶えた先に、淡い光を放つブレスレットを見つけた。

それは、かつてアイヴァンがクレアに贈った特注のブレスレットだった。スズランの模様が彫り込まれ、手の甲から手首にかけてを覆うために大ぶりに作られている。

「やはり、ここに連れ込まれたのか」

アイヴァンはかがむと、そのブレスレットを拾い上げ、力強く掌に握りこんだ。

彼女のぬくもりが、まだ残っている錯覚すら覚える。



それからアイヴァンはそのブレスレットを胸ポケットにしまうと、すっと立ち上がり、腰に差した銀色の剣をスラリと引き抜いた。そして、獲物を捕らえた黒豹のように、猛々しい勢い露に錆びた鉄製の門を睨みつける。

「早く、彼女を連れ戻そう。まだ間に合うかもしれない」

焦った様子のエリックが、アイヴァンより先に前へ進み出ようとした。

だがアイヴァンは、剣を持っていない方の手で、物静かにエリックを制す。

「俺が一人で行く。あなたは一度城に戻り、団員たちをここに連れてきてください」

「そんな、いくらあなたでも無茶だ……! 敵は何人いるか分からないんだぞ!」

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